私は大学卒業後、大手金融機関に勤めていました。就職活動は特に苦労もなく採用が決まりました。知り合いや親せきなども「〇〇大学出身だしさすがだな」などと内定を喜んでくれました。
しかし私は入社から半年後にその大手金融機関を退職しました。
ある日、仕事のやり方がトロいとその上司に厳しく注意されました。数十分に及び説教をされたことで我慢できなくなり、退社を決意しました。
同期たちは「そんなことくらいで辞めるのはもったいない」と私の退職を止めたのですが、私はそれで全く構わないと思っていました。
というのは、辞めたら気楽になれますし、転職活動をしたらもっと条件の良い会社に入れるのではないか?という幻想があったからです。
また、前職が大手金融機関となると、そのポテンシャルを買われて、たいていの会社なら向こうから頭を下げて採用してくるだろうなんて考えていました。
ところが、現実は甘くはありませんでした。履歴書は通過しても面接でことごとく不採用になるということが続いたのです。これは就職活動では味わったことがない挫折でした。
やはり、新卒で入った会社を半年で辞めてしまったというのが、印象を悪くしていました。
面接では「どうして半年で会社を辞めてしまったのですか?」とお決まりのように聞かれました。
そこでは、煙に巻いて、本当の退職理由は語らなかったのですが、おそらく「根性がない」「継続できない」「信用できない」というふうに見なされていたのだと思います。
まあ企業側の立場に立って考えてみると、当然のことだと思います。新卒で入社した会社を半年で退職するような人間は、また短期で辞められてしまうのではないか?という不安を感じるのは致し方ないことだと思うからです。
また、前職が大手金融機関だったとしても、半年しか勤務してなければ新人でしかありません。新人研修を受けたくらいでは、到底、スキルや経験、人脈にも期待できないわけです。
採用するメリットがあまりないのです。
また、私自身、偏差値が高いとされる大学出身ということもあって、当時はプライドの塊で有名な大手企業しか考えていませんでした。そういった会社は当然、倍率も高いので、私のような人材はなかなか採用にならないという事情もあったのだと思います。
40社くらい落ちた段階で、貯金も尽き、将来の不安を感じるようになりました。そこで、派遣会社に登録して派遣社員として働き始めました。
派遣社員時代はパソコンを使った事務職を主にしていました。
給料も安かったですし、親戚たちからは「〇〇大学を出て派遣社員とは情けない」などと口々に言われて情けなかったですね。
派遣社員時代は、何かスキルを磨いて手に職をつけなければならないと考えました。
そこでパソコン関係のさまざまな資格も取得しました。それから2年後、私は、登録していた転職エージェントから紹介されたシステム開発の会社に転職しました。雇用形態は正社員です。
無名の中小企業ですし、大手金融機関に勤めていた時代と比べると給料も減り、さらに休みも取りにくくなりました。それでも正社員という肩書を再び得られただけで満足しています。
転職先が決まった最大の要因は、身に着けたスキルを評価していただいたことだと思います。逆にいうと、転職活動で評価されるのは、学歴や前職のネームバリューではなく、即戦力としてのスキル・経験ということなのだと思います。
もし大手金融機関時代に戻れるとしたら、「新卒で入社した会社は簡単に辞めるな!」と当時の自分に言いたいですね。早い段階で辞めてしまえば、それだけ転職活動は難航すると思っていたほうがいいと思います。
(転職の体験談 20代男性)