楽なバイトとしてよく話題に上がるのは家庭教師バイトです。
私も家庭教師バイトをやったことがあるのですが、楽なバイトだとは感じませんでした。
今から7年くらい前の話になりますが、当時大学1回生だった私は
家庭教師バイトを始めることにしました。
まずは家庭教師を派遣する会社に登録。それから数日後、電話がありました。
「先生、先日はご登録ありがとうございます。条件に合う生徒さんが見つかりましたのでご連絡差し上げました!」
話を聴くと、見つかった生徒さんというのは、中学3年男子で現時点ではあまり勉強はできないが、負けず嫌いでガッツがあるとのこと。
最寄り駅は3駅行ったところにある団地。受験を控えているので、可能なら週2回でも3回でも教えに来てほしいとのこと。
家庭教師は時給1500円以上ですし、椅子に座って勉強を教えればいいだけというふうに聞いていました。
「先生なら大丈夫ですよ。ぜひお願いします」
と頼まれ、私自身も断る理由もなく快諾しました。
電話をし終わってから私はガッツポーズしました。「家庭教師のように楽なバイトをできる特権を得るために、大学受験をがんばってきたんだ!よっしゃやったるか!」
私は当時、中学校の教師になるという目標を立てていました。しかも、普通の講師ではなくダメな生徒をも更生させるようなカリスマ的な教師になろうと思っていました。
ですから、ある意味、大きいチャンスが訪れたというわけです。
もしその受験生を志望校よりランクが上の高校に合格させたら、大きな実績になるとも思いました
「これはおいしい案件だな!」と思いました。
また家庭教師バイトをやってる友人に聞いた話によれば、教えている生徒さん宅では、お寿司やケーキも出てくるとのこと。
それはご家庭によりけりなわけですが、週何度も教えに行ったら何か出してくれるに違いないと思いました。
いずれにしてもおいしいバイト先にありついたぞ!と改めて思いました
そして指導1日目を迎えました。私は家庭教師センターから送信されてきたFAXを見ながら、私はその中学3年生が住む団地へ向かったのでした。
チャイムを鳴らすと、茶髪の40代くらいの女性が出てきました。「先生、待っとったよ。どうぞ」と家の中に案内されました。
家のなかはタバコの煙が充満していました。
なんかやばいかも?と思ったら、奥から生徒さんが出てきました。
変形ズボンを履いて髪は金髪、そり込みをしています。やば!と思いました。
「誰?」
「あ、今日から教えることになった家庭教師の○○といいます。今日から君の勉強を・・」
すると、中学生は怒鳴り始めました。
「家庭教師?はあ?ババアいらんことしやがって!しばくぞ!」
そして激しい親子喧嘩が始まったのでした。
「誰が家庭教師なんて雇えいうたんや!」
「お前、受験生やろが。成績もクラスでびりで母さん恥ずかしいわ」
「どうでもええやんけ!高校行かんいうとるやろ!」
「高校いかんとどうするんやボケが!」
「どうでもええやんけ!お前が決めるなや!」
物を投げ合い、壁葉陥没していました。
カリスマ中学教師を目指す私としては「何かせねば」と思い、割って入りました。
「ちょっと君、君!とりあえず、落ち着こうか。今日は話を聴くだけやし」
すると、その中学生は私にも切れかかってきました。
「なんじゃこら!くそおっさんが!誰が教えてほしい言いたんや!お前もしばかれたいんか!?帰れ!」
私はそのあまりの迫力に恐怖感を感じ足ががくがくしました。
そして言い返すこともできず、立ち尽くしてしまいました
そんなこんなで・・とてもじゃないですが勉強を教えられるような雰囲気ではありませんでした。というより私には手に負えないと思いました。
家庭教師センターに電話をしたところ「何とかお願いしたいのですが・・。何とかなりませんかね?」と言われました。
私としては何とかしたかったのですが・・「すいません・私には無理です」と答えるしかありませんでした。
結局、その生徒さんの担当を外してもらう形で収まりました。
しかし、それにしても家庭教師バイトって楽な仕事じゃないなと思いました
私は辞退したものの、その代わりにあの生徒さん宅に派遣される家庭教師もいるわけでしょうし・・
生徒さんがおとなしくて従順ならまだしも、反抗期であるなど難しい生徒さんを教えることになれば、かなりきつい仕事になるのではないかと実感しました。
家庭教師バイトの場合、自分にどうしても合わない生徒さん宅は断ることができるのでまだいいと思います。しかし、考えてみれば、公立中学の先生などは生徒さんを選べないわけです。
自分に何の非がなくても反抗してくる生徒さんにも根気強く向き合わなければいけないわけで・・
カリスマ中学教師・・私には到底無理だな・・と思った1日でした。
(楽そうできつかったバイト体験談 30代男性)