私は長らく勤めていた住宅販売の営業マンを辞めた後、いくつかの仕事を経験しました。そのなかで、清掃作業員の仕事が一番気楽で良かったです。
住宅販売の営業マンの仕事を辞めた理由は、人間関係のストレスでした。厳しいノルマに追われ、少しでも達成できないと上司から怒鳴り散らされたことを苦にしました。
また、営業マン同士は敵同士で足の引っ張り合いも日常茶飯事。あることないこと陰口をたたかれたり、あるときは顧客との関係が壊れるように裏工作をされたり。給料や待遇には満足していたのですが、そんないびつな人間関係から人間不信に陥って前職を辞めました。
退職後1年くらいは転職活動をする気力が湧かず退職金を切り崩して生活をしていました。
しかしそのままでは駄目だと思い、リフォーム会社や飲食店などでアルバイトをいくつか経験しましたが、どれも人間関係がうまくいかず辞めてしまいました。
やはり50歳にもなると、それなりのプライドがありますし、働きにくいものです。20代や30代の上司・先輩にペコペコ頭下げることはなかなかできませんでした。
「おっさん、使えねえな」「おっさん、もっとシャキッしろよ」なんて言葉で20代の先輩に吐かれたとき、我慢しないといけないとは分かっていても我慢できず辞表を提出していました。
ただ、職を転々としてもどんどん生活は逼迫していくだけです。このままでは駄目になると思いました。
そんなとき、たまたま散髪屋で待ち時間に求人情報雑誌のアイデムをめくっていたところ清掃作業員の求人広告を見つけました。
清掃作業員の仕事は給料は高くありませんでしたが、ひとりで黙々と作業をできるといったことが書いてあったので、自分にあうかもしれないと思い応募してみました。
清掃作業員は人手が足りないのか、一度の面接のみで即採用になりました。若い大学生の子も在籍していましたが、多くは私と同年代あるいは60歳以上の人でした。
まずは研修を受けて清掃の技術や段取りについてひととおり学びました。
研修後はいよいよ清掃作業を開始です。掃除をする場所は商業施設のフロアでした。グループで現場に向かうのですが、現場に到着すると自分の持ち場についてそれぞれが掃除をするスタイル。
清掃作業は単純作業で仕事自体は簡単ですし体力は要しませんが、それなりに忍耐力が要りました。頭を使ったり、コミュニケーション力を求められる場面もありません。コツコツと地道な作業をすれば十分な楽な仕事でした。
私の場合、清掃作業員の仕事に非常に向いていたと思います。適度な運動になりましたし、何より他人をコミュニケーションを取る場面がほとんどない点がうれしかったです。仕事仲間とは軽い世間話をすることはあるものの、ごく表面的な会話しかなく、煩わしい人間関係に発展するようなことはありませんでした。
というより、職場全体が大人しい感じでした。詳しくは聞いていないので想像の範囲ですが、もともと他人とのコミュニケーションを苦手としている人が多いのではないでしょうか。
皆、黙々と作業に取り組み、休憩時間はスマホをいじったり読書をしたりと自由に過ごしていました。話をするにしても「今日は天気がいいですな」「午後からは暑くなりそうですかな?」みたいなのんびりした会話ばかりでした、
そんなユルい職場環境でしたから精神的も非常にラクでしたね、
清掃作業員の仕事は2年半ほど続けましたが、結局辞めてしまいました。辞めた理由は単調な作業に飽きてしまったからです。人間はおかしな生き物で、複雑な人間関係にもまれると一人で行動したくなるのに、いざひとりになると、他者との交流を求めるのです。
もう少し人間関係にもまれる活動的な仕事をしたいと思い、現在は小さな出版社で営業の仕事をしています。
(転職の体験談 50代男性)