私はアルバイトも含めるといろいろな仕事をしてきましたが、ある地方の観光施設で受付をする仕事はとても楽でした。
私が働いていたある地方の観光施設は、普段からあまり観光客が多くありませんでした。特に平日はガラガラで閑古鳥が鳴いていました。私はその施設の入口で受付をやっていたわけですが、ほとんどやることがありませんでした。有料施設であるため、お客さんは入場券を購入するわけですが、入場券の券売機が設置されていたため、私がやることとすれば、お客さんが買った入場券を確認してパンフレットを渡し「どうぞ、こちらから順路になります」と軽く案内するだけでした。
ただ、たまに旅行会社の団体客がツアーの立ち寄りスポットとして立ち寄るので、そのときばかりは人で賑わいます。
といっても、そういった団体ツアーには引率役である添乗員さんが同行しているので、仕事が一気に増えるということはありませんでした。
というのは、添乗員さんがまとめて精算やパンフレット配布をしてくれるので、全て任せていれば十分だったからです。
私がやることとすれば、添乗員さんからかかってくる電話を前日と当日に何度か受けて、大体の到着時間とお客さんの人数をヒアリングした上でパンフレットを人数分用意するだけでした。ただ、少し頼りない添乗員さんが引率する団体ツアーの場合、トイレの位置やバス出発時間などバス車内ではっきり伝えていなくて、お客さんが「バス出発は何時でしたかね?」みたいにこちらに聞きに来るということはあました。
受付をしていないときは、パソコンを使っての事務作業や伝票整理、電話の応対もやっていました。といっても暇な観光施設。いずれも簡単な作業でしたし、ゆっくりやっても時間が余ってしまいました。やるべき仕事は、大体は午前中で終わってしまい、昼から夕方くらいにかけては、とにかく暇で暇で仕方ありませんでした。そんな暇な時間は、何も考えずボーっとしているか、地域の観光情報誌を何気なく眺めるかして時間をつぶしていました。
そんな暇で退屈な仕事は、最初のうちは極楽のように感じていました。しかし、仕事に慣れて年月が経つにつれて、「私は本当にこのままでいいのか?」と考えるようになっていきました。というのは、仕事を通して自身が何か成長しているという実感が何もなかったからです。誰かに何か言われたり叱られたというわけでもありませんが、このままでは自分はダメになっていくのではないか?という漠然とした不安が湧き上がってくるようになりました。
学生時代の友達と一緒にランチにいったときなどはそれを痛感しました。友達が世界を舞台に、忙しくも充実した日々を過ごしていることを目を輝かせながら語るのを見て「羨ましいなあ」と思いました。来る日も来る日もボーっと暇つぶしをしているだけの私は、どんどん置いて行かれてしまっているような気がして気持ちが落ち込んでいきました
そんな風に悩んでいたある日、私は上司と仕事と関係ない些細なことで少し口喧嘩をしたのをきっかけに、その観光施設での受付の仕事を辞めてしまいました。周囲は「え?なんでそれくらいで辞めるってなるの?」と驚いていました。もちろんのこと、辞めると決めたのは決して上司が原因ではありません。暇で退屈な仕事をつづけていくことに限界を感じていたからです。
「暇で退屈な仕事」は確かにプレッシャーのないのんびりとした日々を送れますし、ある意味「極楽」だと思います。ただ、スキルを磨いたり人生経験を培うという面では、仕事から得られるものは少ないと思います。
ちなみに私は現在、忙しく目の回りそうな職場で働いています。確かに毎日ヘトヘトになるまでエネルギーを使い「どうしてこんな職場に転職なんてしたんだろう?」と思うこともあります。ただ、自分の能力をフル活用でき、自分が成長していることを実感できるため日々充実感を感じています。
(楽な仕事の体験談 30代女性)
暇で退屈な観光施設の仕事を通して
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