高校生までは、校則でアルバイト禁止。よって、大学生になって初めての夏休み、アルバイトができるようになったのが楽しみでたまりませんでした。ダブルスクールの費用捻出のため、アメリカへの短期留学の希望を叶えるためにも、その資金集めにアルバイトを日課にしようと心に決めました。
勉強もそこそこしたかったので、通勤時間削減のため、アルバイト先には自転車で通える近所にあるコンビニを選びました。そのコンビニは誰でも知っているような大手コンビニではなく、地域密着型のマイナーなコンビニでした。大手コンビニではバーコード式のレジが主流になりつつあった当時でも、相変わらず手打ち式のレジを使用していました。その点、ちょっと嫌だなと思いましたが、計算は得意な方でしたし、何事も経験が自分の信条なので、それほど気にせず、まあいいやと思ってコンビニバイトを始めました。
採用になった翌日から私は、その地元のコンビニで、朝から昼の繁忙時間帯で勤務するようになりました。駅からすぐのオフィス街にあるコンビニで、日本でトップクラスの大学がある学生街からもほど近い立地でした。私は違う大学に通っていましたが、その有名大学の数学科に通う人とペアになることが多かったです。一緒にペアで入るアルバイトさんの個性が強烈で・・最初は本当に苦痛でたまりませんでした。なぜかというと…。
手打ちのレジに慣れるまで、私がレジをたたくわけです。その間「数学くん(仮称)」は袋詰めを行います。そのペアで、朝と昼の行列に対処することになるわけです。数学くんはとにかく暗算が得意なので、私がレジをたたく前に合計額を出してしまいます。商品にはすべて値札が張ってあるため、飲み物とパンくらいだったら、パッと見て消費税まで暗算で答えを出してしまうのです。
自分の計算には絶対的な自信を持っているので、行列が長くなってイライラしてくると、私がレジを打ち終わる前に彼は答えを横で叫んでいました。とにかく優秀な人なので仕事が早かったです。ときにはお客さんとお金のやり取りまでしてしまい、そして、私が焦って打ち間違えてしまうと、さらにイライラした数学くんは「違う!」と横で小姑に変身します。
並んでるお客さんにも「できないやつだな」という目で見られ、私は「すみません」とつぶやきながら、小さくならざるを得ませんでした。店長もその忙しい時間には一緒に入ってくれていました。数学くんの暗算力と鉄壁の自信と、ちょっと頑固な性格をよくわかっているので、「まあ頑張れよ」という優しい目で応援してくれているのがせめての救いでした。
数学くんが発する無言のプレッシャーのおかげで、レジ打ちは早くなりました。レジ打ち以外はコンビニバイトでは、品出し、掃除、陳列、揚げ物、宅急便などいろいろやることはありました。ただ、これらは誰がやってもそうスピードは変わらなかったので楽だと思いました。
私は朝寝坊なので、コンビニバイトを通して生活を変えなきゃ!と思っていました。早朝から昼過ぎまでをコンビニでのバイト時間とし、午後は自由に使うことにしていました。午後に友人と遊びに行ったり、予定がない日(ほとんど暇)は図書館に行ったりしていました。コンビニバイトはいろいろ大変なこともありましたが、規則正しい生活をつくることができたと思います。今となっては良い思い出です。
(コンビニバイトの体験談 40代女性)