私が今までやったアルバイトのなかでダントツで簡単だったのは交通量調査のアルバイトでした。「社会の荒波」という言葉からは全く無縁な楽ちん過ぎる仕事だったのです。
私は交通量調査のアルバイトと出会うまではサービス業界で仕事をしていました。残業の嵐で、睡眠時間は3時間くらい。社内での上下関係も厳しく、先輩社員に理不尽に怒鳴られるなど、身体的にも精神的にもしんどい仕事でした。そんな日々でストレスが溜まり、体調を崩して退職。次の転職先を探す期間にとアルバイト求人サイトの【アルバイトEX】を探していたときに、交通量調査のアルバイトをたまたま知ったのでした。
「調査」とあるだけに、リサーチの専門知識や測量技術など高度なスキルが必要なのだろうなと想像していました。もしそうなら畑違いの職場にいた私など採用にならないだろうなと思いつつ、日給10000円が魅力的で、ダメもとで掲載元の会社に電話。すると、「説明会に来れますか?」とのことで場所や時間の案内がありました。持参するものはハンコとボールペンだけとのこと。「履歴書や職歴書の規格は決まっているのでしょうか?」と聞くと、「履歴書など要りまんよ。遅刻などしなければ、調査に入っていただけます」と言われました。「えー?そんなので良いの?」と内心思いつつ、それでも不安になりながら、新調したスーツとネクタイで会場に到着。すると、中高年の男性を中心に集まっていて、皆ラフな私服ばかり。真面目そうな人もいましたが、金髪やモヒカンなどかなり自由な恰好?の人もいました。酔っぱらい風のおじさんからは、「君、真面目やなあ。誰でもできる仕事だし適当で構わんよ」と言われてしまいました
そして説明会が始まったのですが、「断面調査」「車種分類」といった専門用語がいくつか出てきたものの、私が想像していたような高度な専門知識やスキルを要する仕事ではないようです。単に車の台数を数えるだけの仕事と分かりました。説明会は1時間ほどで終了。
そして交通量調査バイトの当日を迎えました。集合時間は朝の6時。集合場所の駅前に着くと、交通量調査のアルバイトたちが集まっていました。点呼をとり数人ごとにハイエースに分乗して各調査ポイントに移動。私はまちなかの交差点で調査をすることになりました。
調査ポイントに着くと、車の運転手兼現場監督の人が全て指示や世話をしてくれたので楽でした。まずは、車の後部に積んでいるパイプ椅子や機材一式(台数を数えるカウンター、記録用紙、懐中電灯など)を取り出して、交差点脇の道で調査の準備をします。「この椅子に座って、この道を直進する車両と左に曲がっていく車両の数を数えていってください。1日長いですけどがんばってください」と指示され、運転手兼現場監督の人は車に戻っていきました。
記録用紙は1時間ごとに車両(乗用車、トラック、バス、バイクなど)の台数を記入するようになっていました。ひたすら交差点で車両を数えて1時間に一度、記録用紙に台数を書くのを繰り返していくというのが、交通量調査員の仕事の全てでした。説明会で酔っぱらい風のおじさんが言っていたように、あまりに簡単すぎる仕事内容で、技術や経験、才能といったものは一切不要だと感じました。いわば、居眠りせずにその場にいるというのが仕事と言っても過言ではないほどです。
調査時間は7:00~19:00の12時間。12時間と言えば長くて大変そうですが、1人の調査員がずっと調査をしているわけではありません。2時間経てば違う調査員が交代要員としてやってきて、1時間の休憩に入ります。1時間どこかで休憩してきたら交差点に戻って再び調査を2時間するというサイクルを繰り返していくという感じでした。ですから、12時間調査といっても実働時間は8時間(休憩4時間)であるわけでその点も楽でしたね。仕事内容も簡単(調査時間中も休憩しているようなもの)な上に、こんなに休憩をいただいていいの?と思ったほどです。
ビルの隙間に西日が沈み、あたりが暗くなってくると、寒くもなってきて防寒具を着込みました。
昼間くらいは暇で心地よい時間に感じていたのですが、それくらいの時間になると、「長いなあ・・早く終わらないかなあ・・」と調査終了時間がくるのが待ち遠しくなっていました。
調査終了時間の19時が来ると、交差点で調査をしていた他の交通量調査員と「お疲れ様でした」と声を掛け合いました。しばらくすると、迎えのハイエースがやってきて、パイプ椅子や機材一式を車に詰め込み、朝の集合場所に戻りました。そして、給料(日給)をいただきました。領収書と引き換えに封筒に入った日給(交通費込みで10000円)を確認。給料(日給)をもらった人から自由解散という流れで舌。
なお、私は前職で厳しい人間関係で苦しんだこともあり、その点、交通量調査の当日を迎えるまで、ちょっぴり不安でした。「何かミスをして叱られたらどうしよう・・」「ベテランの人から理不尽なことで命令されたらどうしよう・・」そんなことを考えては不安になっていました。しかし、全くの取りこし苦労でした。交通量調査のアルバイトは上下関係が全くなくとても楽だったのです。長年やっているベテランさんも初心者も対等で、誰かから高圧的に命令されるようなことも一切ありませんでした。
私はそれから交通量調査のアルバイトを週末に何度かやりながら平日は転職活動を行い、正社員の転職先が見つかりました。交差点に1日中いて、寒くて悲しくなったこともありましたが、今考えても、交通量調査のアルバイトの日々は不思議と心地よい時間でした。あるベテラン交通量調査員は、「交通量調査員は、会社勤めがうまくいかなかったり、リストラされたり、夢を追っていたり、何らかの事情を持っている人が多いよ」と話していました。そんなこともあってか、人の痛みを分かる優しいひとが多かったように感じました。そんなことからも、私のように会社勤めでのストレスに苦しんだ人、コミュニケーションがあまり得意でない人などには特に、交通量調査は気楽にできるおススメのアルバイトです。
(30代男性 暇で楽なアルバイトの体験談)