奨学金を返済できず破産することを奨学金破産といいます。そんな奨学金破産が今、大きな社会問題になっています。
朝日新聞によると、奨学金破産者は過去5年間でなんと15338人にのぼっているそうです。
その内訳は本人の自己破産が8108人、保証人・連帯保証人の自己破産が7230人だったそうです。
どうして破産が本人だけでないかというと、奨学金を借りるためには保証人・連帯保証人を立てなければならないからです。
つまり、仮に奨学金を借りた本人が自己破産してもそれで終わりではなく、次は連帯保証人に請求がいくという仕組みになっているのです。
奨学金は、経済力がないため、大学などの学費を補うために借りるお金です。大学は学費が高いため、2人に1人くらいの割合で、奨学金に頼らざるをえないという状況だそうです。
ちなみに大学の授業料は現在、私立大で平均86万、国立大で53万。初年度は入学金30万円ほどそれに上乗せされた金額を大学に納めなければなりません。
それを借りて、大学卒業後に返済していく問うわけです。奨学金の返済金額は借りた金額にもよりますがひと月5万円ほどだとされています。
大学を卒業後、安定した企業に正社員として入社したなら、月5万円の返済は問題ないかもしれません。
そういうこともあり「奨学金を支払えない人が増えている」という問題に対して、「自己責任だ」「無計画だ」という意見も少なくないというわけです。
ただ、問題は奨学金を支払えない人が増えている背景には非正規雇用が増加していることです。
ちなみにリーマンショック後、非正規雇用は増加しており、現在の非正規雇用総数は雇用全体の三分の一を上回っているとされています。
それは本人が非正規雇用を希望する場合もあるのですが、正社員で働きたいにもかかわらず、なかなか採用が決まらず非正規での働き方を余儀なくされているというケースも少なくないといわれています。
非正規の仕事しか働き口がなかった場合、奨学金を毎月5万円ほどを返済していくのは非常に厳しいといえます。
例えば手取り15万円ほどなら食費、光熱費、家賃、通信費などを支払い、さらに奨学金を返済するとなると、何も残らないあるいは足りないという状況になってしまいます。奨学金は実質的な学生ローンというわけです。
真面目にコツコツ働いていたとしても非正規雇用で収入が低い場合、奨学金返済のために毎月お金で苦しまなければならないというのが現実なのです。
奨学金には一定期間支払いを猶予してもらえる「返済期限猶予」などもあります。ただ、一時しのぎにすぎませんし、利子と延滞金も上乗せされケースによっては元金よりも返済金額が高くなってしまう状況に陥ることもあります。
あまりに苦しい場合、奨学金破産について弁護士に相談してみるのもよいかもしれません。
いずれにしても現在の奨学金制度は、非正規雇用が増加している日本の社会状況に合っていない部分が少なからずあるのは間違いないと思います。日本学生支援機構もそこあたり考慮して改善してほしいものです
あとは、大学の学費はどうしてここまで高いのか?という問題があると思います。本来、学生の未来を支援をするはずの奨学金制度が自己破産の原因になってしまう状況はやはり異常だと思います。北欧や欧州の国々のように公的資金を投入して授業料を下げる、あるいは、返済不要の奨学金制度をより充実させる仕組みが必要であるような気がします。その点、政治家の方々にもう少しがんばってもらいたいですね。
(奨学金破産について思うこと 40代男性)