いろんなアルバイトを経験しましたが、旅館バイトは楽なバイトそうにみえて意外としんどいバイトだと思いました。
私は大学生のとき、とある温泉地にある大型旅館でアルバイトをしたことがあります。それは大学が春休みになる2週間でした。
その旅館バイトをするまで、私は旅館の仕事は楽な仕事だというふうに考えていました。
旅館スタッフは観光客とのんびり世間話をしながら客室へ案内し、ときどき電話番。そしてきれいな自然に囲まれて「旨いもの三昧、&温泉三昧」、毎日ワイワイ楽しく大宴会~!
そんなのんびりしたバイト生活をイメージしていました。ですから、帰って同じ大学に通う同級生たちに春休みの自慢話をしようと、考えていました。
「今、温泉でのーんびりくつろいでま~す」みたいなメールを写メールとともに送ろうっかな?みたいに考えては早く旅館バイトが始まらいかなあ!と首を長くして待っていました。
そしていよいよ旅館バイトが始まりました。電車を乗り継ぎ、指定された駅前に行くと、旅館の女将さんが車で待っていました「よろしくね。一緒に頑張りましょう」
そう言って海岸線を20分ほど車を走らせ、温泉街にある旅館に到着しました。潮風の香りがただよってきます。私は胸躍りました。
これから毎日大宴会のバカンスが始まるんだ~!
オーシャンビューの部屋でゆっくりくつろいで羽を伸ばそう!
なんて妄想してはニヤニヤが止まりませんでした。
しかし、その期待は初日から裏切られたのでした。
とにかく忙しい!
初日はその旅館には団体客がバス2台で来たんですが、80人分ほどの食事をつくらないといけないのです。厨房はまさに戦場でした。
「ぼけっとしとらんと早く動けよ!」
「なに休んどるんだ!やる気あるのか!」
私たち大学生バイトたちは女将さんやパートさんたちの言われるまま、とにかく走り回りました。
お膳につけものを載せていく作業、配膳をする作業、宴会セットを運ぶ係、座布団を並べる係・・それが終わったらつぎは洗いもの。
洗い物ではどこにどの皿を置けばいいのかわからないのでもう怒鳴られっぱなしです
「違う違う。何度言ったら分かるんだ、このボンクラが!」
「そこじゃないって言っただろ!人の話聞いてないんか!?」
もう何がなんだか分からず「すいません」「すいません」とひたすら謝りっぱなしでした。
その日の仕事が終わったのは23時半。それから交代でお風呂に行って就寝。もうクタクタでした。翌日の起床は朝5時・・
そして次の日も、朝から晩まで働きっぱなしでした。2日目からは布団の上げ下げ、館内の清掃も加わり・・旅館の仕事ってこんなにやること多いの!?とびっくりしました。
昼間に1時間の昼寝時間があるのですが、そのありがたさを骨身にしみて感じるほど一日中働いていました。
なお、食事は3食出ましたが、お客さんが食べるものとは基本的に違っていました。
ご飯、みそ汁、干物、漬物 以上。
しかも時間をかけて食べていたら「ちゃっちゃと食べる!仕事が待ってる!」と女将さんから容赦ない叱咤が飛んできます。
鯛や伊勢エビなど刺身三昧!夜はカニ鍋を囲んでワイワイ大宴会!という妄想はいとも簡単に崩れ去りました。
バカンスを楽しむリゾート気分で来たはずが、「ここは奴隷の島か!?」と苦笑したほどです。
その辛さを物語るかのように、同時にやってきた4人の大学生バイトのうち1名は数日後に逃亡しました。
ようやく電話がつながったものの「こんなキツイ仕事は自分には無理」という回答だったそうです
そんなこんなで、楽なバイトだと思いきや、とにかく忙しく大変な毎日。
まさに奴隷のようなバイト生活を2週間つづけました。
そしてバイトがいよいよ終わる日の前日、私たち大学生バイトは早めに食事処に行くことを指示されました。
「最後までこき使いやがって!」私たちのうちの一人がぼやきました
しかし・・宴会場で待っていたのは、何と豪勢な料理だったのです!、刺身盛、イセエビ鍋、牛肉ステーキ、マツタケの焼き物、アワビご飯、ビール!
「よくがんばったな。うちの旅館は経営難だからこれくらいしかできなくて申し訳ないけど、せめて今日は楽しんで」
そして、2週間分の給料をもらいました。すると、中にはお札が多めに入っていました。繁忙期ゆえ、普段より忙しかったぶんきちんと上乗せして計算してくれていたのです。
きつかったけど、がんばってよかったと思った瞬間でした。
あれから10年近い年月が流れ、私は現在は社会人として働いています。きついこともいろいろありますが、あの時の旅館バイトの体験があるからこそ耐えられているような気が最近しています。
(楽そうできついと感じたアルバイト体験談 30代女性)